地代の値上げ要求への対処法|拒否できる条件と交渉の進め方【借地借家法】
地主からの地代値上げ要求への対処法を4ステップで解説。借地人には拒否する権利があり、契約書に不増額特約があれば値上げ請求自体を退けられます。相当と認める額の支払い・供託・調停まで、借地借家法第11条の条文に沿って説明します。
この記事でわかること(最短回答)
地主からの地代値上げは拒否できます。 借地借家法では、値上げに合意できない場合、借地人は「相当と認める額」を支払い続ければ良いとされています。
合意できなければ裁判所の調停で適正な地代が決定されます。
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法律上の根拠
借地借家法第11条では、地代の増額請求について以下のように定めています。
- 地主は、地代が不相当になった場合に増額を請求できる
- 合意に至らない場合、借地人は自分が相当と認める額を支払えばよい
- 裁判所の確定判決があるまでは、借地人が支払った額が「暫定の地代」となる
つまり、地主が一方的に値上げを通告しても、借地人が同意しなければ値上げは成立しません。
条文(借地借家法第11条第2項)はこう定めています。
地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。
出典:借地借家法(平成三年法律第九十号)e-Gov法令検索(2026年8月4日取得)
🔍 まず契約書を確認:「増額しない特約」があれば値上げを拒めます
ここを見落とす方が多いのですが、最初に確認すべきはご自身の契約書です。
第11条第1項にはただし書きがあります。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
つまり契約書に「○年間は地代を増額しない」といった不増額特約が入っていれば、その期間中は地主の値上げ請求そのものが通りません。条件を満たすか検討する以前の話になります。
古い借地契約では、こうした特約が入っているケースがあります。値上げを請求されたら、まず契約書を最初から最後まで読み直してください。
なお、逆の「減額しない特約」は借地人に不利なため、借地権者に不利な特約は無効とする規定(第9条・第16条など)との関係で効力が問題になります。判断に迷う場合は弁護士に確認してください。
値上げが認められる条件
地主が地代の値上げを請求するには、以下のいずれかに該当する必要があります。
| 条件 | 例 |
|---|---|
| 固定資産税の増額 | 税制改正や再評価で税額が上がった |
| 土地価格の上昇 | 周辺の地価が大幅に上がった |
| 経済事情の変動 | 物価の上昇、インフレなど |
| 近隣の地代との乖離 | 周辺の同条件の借地と比べて著しく低い |
逆に言えば、これらに該当しない値上げ請求は認められません。
地代の値上げ要求への対処法【4ステップ】
値上げを請求されたときの対処法を、順を追って説明します。いきなり「払えません」と突っぱねるのも、言われるまま応じるのも、どちらも損をします。
STEP0:契約書に「不増額特約」がないか確認する
手順に入る前に、まず契約書です。前述のとおり「一定の期間地代等を増額しない旨の特約」があれば、その期間中は値上げ請求そのものが通りません(借地借家法第11条第1項ただし書き)。ここで終わる可能性があるので、必ず最初に確認してください。
STEP1:値上げの根拠を確認する
まず地主に「なぜ値上げが必要なのか」の根拠を確認してください。
確認すべきポイント:
- 固定資産税はどのくらい上がったのか
- 周辺の地代相場はどうなっているか
- いつから値上げしたいのか
- どのくらいの金額への値上げか
STEP2:相場を調べる
地代の適正額を把握するために、以下の方法で相場を調べます。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税からの算出 | 固定資産税+都市計画税の3〜5倍が住宅地の目安 |
| 不動産鑑定士への依頼 | 専門家による適正地代の算出(費用20〜30万円) |
| 近隣の地代の確認 | 同じ地域の借地人に聞く(難しい場合もある) |
STEP3:交渉する
相場をもとに、地主と交渉します。
交渉のポイント
- 感情的にならず、データに基づいて話す
- 一定の値上げは受け入れつつ、金額を交渉する
- 段階的な値上げ(今年は○円、来年は△円)を提案する
- 書面でやり取りの記録を残す
STEP4:合意できなければ供託する
交渉がまとまらない場合は、自分が相当と認める額を法務局に供託します。
供託のメリット:
- 地代を支払っていないとみなされない
- 借地契約の解除を防げる
- 裁判所が適正額を決定するまでの暫定措置として有効
裁判所での解決方法
地代増額調停
合意できない場合、地主または借地人が裁判所に「地代増額調停」を申し立てます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 物件所在地の簡易裁判所 |
| 費用 | 申立手数料(数千円)+ 鑑定費用 |
| 期間 | 3〜6ヶ月 |
| 結果 | 調停成立 or 不成立(不成立の場合は訴訟へ) |
調停では、裁判官と調停委員が間に入り、双方の主張を聞いた上で適正な地代を決定します。
注意:裁判で確定した場合の精算
裁判所が確定した地代が、それまで支払っていた額より高かった場合は、差額に年1割の利息を付けて支払う必要があります(借地借家法第11条第2項)。
自己診断:値上げ請求への対応
- ☑ 固定資産税が上がった根拠を示された → 一部受け入れて減額交渉
- ☑ 根拠なく「相場が上がった」と言われた → 拒否して相場を調べる
- ☑ 大幅な値上げ(50%以上)を求められた → 不動産鑑定士に相談
- ☑ 「払わないなら出ていけ」と言われた → 供託して弁護士に相談
- ☑ 何年も地代が据え置きだった → 多少の値上げは受け入れる余地あり
地主との関係が悪化した場合
地代交渉がこじれると、地主との関係が悪化することがあります。
やってはいけないこと
- 地代を支払わない — 3ヶ月以上の滞納は契約解除事由になる
- 無断で建て替える — 地主の承諾なしの建替えは契約違反
- 感情的な対応 — 書面ベースの冷静なやり取りを心がける
最終的な選択肢
地主との関係が修復不能な場合は、借地権の売却も検討してください。
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まとめ
地代の値上げは拒否できます。ただし根拠のある値上げには適切に対応しましょう。
この記事のポイント
- 地主からの地代値上げは法律上拒否できる
- 合意しない場合は「自分が相当と認める額」を支払えばOK
- 値上げの根拠(固定資産税・地価上昇など)を確認する
- 合意できなければ法務局に供託し、裁判所の調停で解決
- 地代を滞納するのは絶対にNG(契約解除の原因になる)
借地権の更新料について詳しくは、借地権の更新料の相場ガイドをご覧ください。
借地権の売却方法については、借地権売却の完全ガイドをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 地代の値上げを拒否したら追い出される?
A. 値上げを拒否しただけでは追い出されません。自分が相当と認める額を支払い続けていれば、借地契約は維持されます。ただし地代を一切支払わないと契約解除の原因になるため、必ず支払いは継続してください。
Q. 供託はどこでどうやって行う?
A. 物件所在地を管轄する法務局で行います。「弁済供託」として、地主に支払うべき地代を法務局に預ける手続きです。窓口で申請書を記入し、地代を納付すれば完了です。
Q. 地代の減額を請求することはできる?
A. はい、借地借家法第11条第3項は減額請求も認めています。固定資産税の下落や地価の下落があった場合、借地人から地代の減額を請求できます。協議が調わないときは、地主は減額を正当とする裁判が確定するまで「相当と認める額」の支払いを請求できます。裁判で確定した額より多く受け取っていた場合、地主はその超過額に年1割の利息を付けて返還する必要があります(利息は受領の時から計算します)。
Q. 値上げ幅に上限はある?
A. 法律上の上限はありませんが、裁判所は「著しく不相当」な値上げは認めません。一般的には、固定資産税の上昇幅や近隣相場を考慮して、合理的な範囲に収まるよう調整されます。
Q. 契約書に「地代を上げない」と書いてあれば拒否できる?
A. できます。借地借家法第11条第1項のただし書きは「一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」と定めており、不増額特約があればその期間中は地主の増額請求そのものが認められません。値上げを請求されたら、条件に当てはまるか検討する前に、まず契約書に不増額特約がないかを確認してください。古い借地契約では入っていることがあります。
Q. 値上げに応じないと契約を解除される?
A. 増額に同意しないこと自体を理由に契約を解除することはできません。借地借家法第11条第2項は、協議が調わない間は借地人が「相当と認める額」を支払えば足りると定めています。したがって、従来どおりの地代を支払い続けていれば債務不履行にはあたりません。ただし支払いを完全に止めると滞納となり解除の理由になり得るため、支払いは必ず続けてください。地主が受け取りを拒む場合は法務局への供託という方法があります。
Q. 値上げ交渉を弁護士に依頼する費用は?
A. 弁護士への相談は30分5,000〜1万円程度が目安です。交渉の代理を依頼する場合は着手金10〜30万円+成功報酬が一般的。調停の代理まで依頼すると30〜50万円程度かかります。
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